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弁護士大久保康弘のブログ

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2016年上半期に読んだ時代小説

今回は今年の上半期に読んだ時代小説を何冊か挙げてみます。別に時代小説ばかり読んでいるわけではありませんが、年を取ると何となく読んだ本に占める時代小説の割合が増えていくのは仕方ないですね。

まずは葉室麟「銀漢の賦」。

 

銀漢の賦 (文春文庫)

銀漢の賦 (文春文庫)

 

 

この作品は、6月に開催された大阪商工会議所の交流会で出会った方に教えてもらいました。この交流会は毎回違ったテーマで開催されるのですが、この会は「月に5冊以上本を読む人」というくくりで募集されたものです。どんな本が話題になるのか楽しみでしたが、やはり時代小説の話題が中心となりました。最近の作家では葉室麟が人気があるようです。先日このブログでも取り上げた「驟雨」や映画化された「蜩の記」などは読んだことがありましたが、この作品は読んだことがありませんでしたが、NHKで「風の峠」という題でドラマ化されています。

この「銀漢の賦」は「驟雨」のように実在の人物を主人公にしたものではなく、九州の架空の小藩で起きる出来事を描いたものです。「銀漢」というのは天の川銀河の意味ですが、銀の髪すなわち年期の入った男性、という意味もかけています(作中で主人公が述懐します)。幼なじみの3人が成人後は百姓、家老、郡方というそれぞれの立場の違いから三者三様の運命をたどることになりますが、小さい藩で資金がないにもかかわらず、藩主が国替えを画策するという難題が持ち上がり、それを阻止するための家老の思いきった行動とそれに対する郡方の行動がクライマックスになっており、ここがなかなか読ませます。ラストが意外にも爽やかな印象を受けます。

  

続いては西条かな「ごんたくれ」。 

ごんたくれ

ごんたくれ

 

 

これは江戸時代の京都画壇の話で、実在の人物がモデル。応挙や若冲などの画家は実名で出てくるのですが、主人公とその友人の二人だけ名前を変えてあるので、少し戸惑いますが、ある程度江戸の絵画に親しんだ人なら誰がモデルになっているのか分かります。ストーリーは、画壇のはみ出し者である2人の交流を描いたもので、モデルが分かれば面白く読めます。2人の運命は過酷ですが、それも「ごんたくれ」ゆえとなれば仕方ないのかも知れません。

 

次は武内涼「吉野太平記」。

 

吉野太平記〈上〉 (時代小説文庫)

吉野太平記〈上〉 (時代小説文庫)

 

 

 

吉野太平記〈下〉 (時代小説文庫)

吉野太平記〈下〉 (時代小説文庫)

 

これはいわゆる伝奇小説です。朝日新聞の夕刊で紹介されていました。私は南朝が大好きで、吉野に何度か行ったり、五條から廃止になったバス専用線で賀名生のあたりに行ったこともあり、また南朝系神社を訪問した北畠顕家の最後の地を訪問したりしたことがありますので、こんな小説があることは覚えておこうと思っていたのですが、幸いにもまだ覚えている間に図書館にあるのを見つけ、借りて読みました。

時代としては南北朝合一の後、いわゆる後南朝の時代で、南朝では自天王・忠義王を奉じていた頃になります。

主人公たちが後南朝の本拠に乗り込むのですが、この本拠に至る道というのが恐ろしい手練れに守られたとんでもない道で、伝奇小説なのでまあ仕方ないのですが、戦いがちょっと無茶だと思ってしまい、素直に楽しめなかったのは年を取ったせいでしょうか。あと、この物語のラストとしては平穏に終わるのですが、それからしばらくして応仁の乱が起こってしまうのを知っている身にとっては、無事に解決というわけにはいかんだろうと思いました。

 

最後に伊東潤「吹けよ風、呼べよ嵐」

 

吹けよ風 呼べよ嵐

吹けよ風 呼べよ嵐

 

 

日経夕刊のコラム欄に著者がピンク・フロイドの曲と同じ題名の小説を書いたことを書いていたので興味を惹かれ読んでみました。川中島の合戦を描いたものですが、上杉謙信武田信玄の両雄を主人公にせずに川中島の合戦を書くという冒険をしています。

ただし同名曲から想像されるような不気味さはなく、終わり方も爽やかな印象だったので、同名曲をBGMとすると合わないという珍しいことになりました。

なお同じ作者の「城を攻める 城を守る」という城郭の研究も出ており、こちらも面白く読めました。前記小説にも城の名前が大量に出てきますが、このような特色をもった書き手なので今後も注目したいと思います。

 

城を攻める 城を守る (講談社現代新書)

城を攻める 城を守る (講談社現代新書)