高坂先生は私のゼミの恩師でしたが、1996年に62歳で亡くなられたので、没後20年で出された本ということになり、その業績がいろんな角度から論じられています。
第一部は論文で、各章の見出しを並べると、
現実主義者の誕生(刈部直)
社会科学者としての高坂正堯(待鳥聡史)
高坂正堯の中国論(森田吉彦)
高坂正堯のアメリカ観(蓑原俊洋)
となっており、
第二部が思い出編となっており、猪木武徳、入江昭、田原総一朗の各氏がそれぞれ思い出を語っています。
このうち、特に興味を持って読んだのが序章の「高坂正堯の戦後日本」でした。
戦後の国際政治に関する論文など腐るほどあるのですが、今でも読む価値があるものはほとんどなく、高坂先生の論文はその数少ない例外なのですが、それが時代とどのように関連していたのかを読み解いていきます。
戦後日本のいわゆる論壇状況は、最近では竹内洋氏の「革新幻想の戦後史」などの仕事で振り返ることができますが、革新幻想にとらわれない現実主義者としての歩みがつづられています。
ここにもあるように、高坂先生は何人かの首相のブレーンのような立場にあったのですが、ちょうど私が大学で国際政治学の講義を聞いていた頃、大平正芳首相が現職で亡くなられるということがあり、講義終了後そのまま記者会見となって驚いたことがあります。そういえば、この国際政治学の講義は、近くの雀荘のおばちゃんが毎回聞きに来られていたことを今思い出しました。
ところで以前、中井久夫氏の書かれた文章の中に、京大の法学部で同期だった(中井久夫氏は大学に入学した時は法学部だった)高坂先生と小室直樹氏の思い出を語ったものがあり、なつかしい気持ちで読んだことを思い出しました。