弁護士大久保康弘のブログ

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山形浩生氏のブログでマイケル・コーニィ作品が取り上げられていた件

山形浩生の「経済のトリセツ」はよく読んでいるブログの一つですが、今回のエントリでは、マイケル・コーニィの2作「ハローサマー・グッドバイ」「ブロントメク!」が取り上げられており、私も昨年コーニィの「ハローサマー・グッドバイ」を再読し、続編の「パラークシの記憶」も読んだので今回取り上げることにしました。

ただし山形氏のマイケル・コーニィに対する評価はあまり好意的なものではありません。若いうちに読むと共感するかもしれないが、というような評価です。

「コニイはたぶん十六-十八歳くらいのための作家ではある。その頃には、この身勝手でだらしないナルシズムは本当に心に響いたかもしれない。」

 

この「ハローサマー・グッドバイ」は、私はサンリオ文庫で、20代の頃に読んで感激しましたが、なるほど山形氏のいうように大甘かもしれません。河出文庫の表紙もこの年になって読むのは恥ずかしいようなものになっているし。 

 

ハローサマー、グッドバイ (河出文庫)

ハローサマー、グッドバイ (河出文庫)

 

 

 

山形浩生 の「経済のトリセツ」

私はハローサマー・グッドバイが大好きですが、20代の時に読んだからかな。

2017/02/28 08:10

 

で、「ハローサマー・グッドバイ」の続編がこちら。

 

パラークシの記憶 (河出文庫)

パラークシの記憶 (河出文庫)

 

  

こちらは、まあ昔は翻訳がなかったので、若いうちに読むものだと言われても読めなかったわけですが、2013年にようやく邦訳され、昨年ようやく読む機会が巡ってきました。

で、読むならやはり「ハローサマー・グッドバイ」からということで。夏休みに福井に行った時に読み始めました。

「ハローサマー・グッドバイ」は、前半の、少年が夏休みに思い描く夢のような日々から一転して、酷寒の状況となってしまうのですが、ラストの1頁が強烈で、きちんと説明されるわけではないけれど、希望的観測からすればこのように考えられる、いやきっとそうだ、そうだと信じる、というようなエンディングになっています。これ以上に、悪女の思わせぶりのような、それゆえ強烈に引きつけられるエンディングは他に類例をみないと思います。

そして続編の「パラークシの記憶」は、「ハローサマー・グッドバイ」からかなり年代を経た、同じ世界での物語で、同じようにボーイズ・ミーツ・ガール物語が展開されるのですが、途中でこの世界の成り立ちの秘密が明かされます。

そしてその秘密は、それを知れば、「身勝手でだらしないナルシズム」など吹っ飛んでしまうようなものでした。この続編は、前作に比べれば、読者もいい気になるのではなく、自己相対化を余儀なくされるものとなっており、それゆえ、ある程度の年をくった読者にとっても読む価値があるといえるのではないでしょうか。