先日この「ユーラシアニズム」という本を読みました。
「ユーラシアニズム」とは、ロシア中心主義の思想をその源流からたどった書籍ですが、中心となるのは、アレクサンドル・ドゥーギンという人物です。この人は日本ではほとんど知られておらず、ググっても
はてなブックマーク - CiNii 論文 - アレクサンドル・ドゥーギン, 『地政学の基礎 ロシアの地政学的未来/空間をもって思考する』, モスクワ, 1999年, 928ページ
という論文が出てくる程度です。ただ、この論文はよくまとまっており、この「ユーラシアニズム」という書籍が、なぜロシア革命直後から書き出されているのかよく理解できました。
このドゥーギンの思想の根底は「地政学」という学問です。
私が大学生の頃、地政学が一瞬だけ注目されたことがありました。当時、地政学を紹介してベストセラーになった本があり、私も買って読みました。タイトルも著者も全く忘れていましたが、ネットで調べたらわかりました。
この本です。
悪の論理―ゲオポリティク(地政学)とは何か (Ohtemachi books)
- 作者: 倉前盛通
- 出版社/メーカー: 日本工業新聞社
- 発売日: 1977/10
- メディア: 単行本
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たしかこれを元にしたテレビ番組も放映されていたような記憶があります(今思い出したのですが、確か「ケースD」というキーワードがあったような)。
この地政学は、国家戦略に科学的根拠と正当性を与えるための学問ですが、ドイツ系と英米系の二つの流れがあるようで、マハンの海洋国家論、マッキンダーのハートランド論などは英米系です。ただこのハートランド理論がドイツ系の理論に受け継がれ、カール・ハウスホーファーの生存権理論の源流となったようです(このあたりはあまり調べず書いているので不正確かもしれません)。
ハウスホーファーは、もともと軍人だったようですが、政治学のカール・シュミットと並んでナチスに重用された学者となりました。そしてこの2人のカールは、同じようにナチスドイツの敗北後には追われる立場になりました。
政治学は学問として長い歴史があるので、学問自体はナチスの敗北後も変わらず存在しただ親ナチスの学者が失脚したりしただけで、シュミットも逮捕されましたが、戦犯として訴追されず、しばらくの隠棲の後に復活しました。しかし地政学は、学問自体がナチスの侵略政策の根源であるとして抹殺され、1946年にハウスホーファーは自殺してしまいました。
しかしこの地政学、ハートランド国家としてのロシアに継承され、今も国家政策に強い影響を与えている、というのがこの「ユーラシアニズム 」に書かれていました。
なおこのドゥーギンですが、トランプ大統領の支持母体の一つであるオルトライトの中心人物である、リチャード・スペンサーが主催するシンポジウムに、スカイプでゲスト出演していたことがあるということで、今後注目すべき人物の一人であることは確かなようです。