弁護士大久保康弘のブログ

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須賀しのぶ「芙蓉千里」3部作

今回はハルビンとシベリアを舞台にした、須賀しのぶの「芙蓉千里」3部作を取り上げます。

満州の北部の都市、ハルビンには約30年前に一度だけ行ったことがあります。

神戸から上海へ、2泊3日の航海をする「鑑真号」という船が出ていて、お金はないが暇はあるので安くどこかへ行けないかと考える若者が多く乗っていました。私もこの鑑真号で中国に行くことにしたのでした。今は新鑑真号となって神戸または大阪から上海までの航海を続けているようです。

船上で、中国旅行社の出店があり、そこで切符をテーブルの上に並べて売っていました。満州方面に行きたかったのでいろいろ見ていると、上海-ハルビンの航空券があったので、じゃあこれに乗ってハルビンまで行き長春、シェンヤンと旧満鉄路線を南下することにしようと思い、航空券を買いました。

そして2日後に上海に着きました。バンドを歩き、豫園に行き、おこげを食べて和平飯店で老人ジャズバンドをドイツ人と聴き、翌日航空機でハルビンまで飛んだのでした。

ハルビンはかなり北にありますが、よく晴れた9月のハルビンは暑く、太陽島というリゾート地に船で渡ったり街をぶらぶらしていました。夕食はよく分からない地元の食堂に行き、兌換券で支払うとえらく喜ばれました。ロシア風の街並みと言われていましたが、そこはいまひとつよく分からず、上海の旧市街とあまり違わない印象を受けました。

 

そのハルビンを舞台とする「芙蓉千里」を読んだのは、第一部の文庫版をブックオフでふと手に取ったことがきっかけでした。それまでこの著者の名前は聞いたことがなかったのですが、なぜか惹かれるものがあったのでしょう。少し立ち読みすると、ハルビンを舞台にしたものということで、それなら読んでみようと思い入手したのでした。

しばらくはそのままになっていたのですが、この作者の近作である「また、桜の国で」が156回直木賞候補になったことを知り、力量のある作家と認められていることが分かり、自分の直感も捨てたものではないと思いました。

この巻で完結したと思っていましたが、図書館のサイトで検索すると続編があることが分かったので2、3は借りて読みました。

 

全3冊と思っていたのですが、文庫では4冊になっていました。

 

 

芙蓉千里 (角川文庫)

芙蓉千里 (角川文庫)

 

フミという女主人公が大陸一の売れっ子女郎を目指す、というなんじゃそれは的な冒頭部ですが、このフミには越後獅子に渡り、ハルビン一の女郎になることを目指すという設定ですが、最後には馬賊になりモンゴル独立運動にかかわったりと波乱万丈の冒険小説です。

幼いころから仕込まれた角兵衛獅子が心の支えになり、また第二部の重要なポイントにもなっています。

 

北の舞姫 芙蓉千里II (角川文庫)

北の舞姫 芙蓉千里II (角川文庫)

 

この北の舞姫とはフミのことです。

舞の名手として人気を博したフミですが、この巻のラストでとんでもない舞を見せ、しかし舞を捨ててしまいます。

そしてフミは馬賊の一員としてモンゴル独立運動やシベリア共和国などとかかわることになります。

暁の兄弟 芙蓉千里III (角川文庫)

暁の兄弟 芙蓉千里III (角川文庫)

 

 そしてフミの人生は一つの極点に達し、クライマックスを迎えます。

永遠の曠野 芙蓉千里IV (角川文庫)

永遠の曠野 芙蓉千里IV (角川文庫)

 

エピローグはなかなか面白く、えっ、こいつとこいつがこうなるのか、という驚きの結末でした。

 

単行本2、3巻の表紙も捨てがたいので貼っておきます。

 

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 早くこの作者の他の本も読んでみたいと思います。