弁護士大久保康弘のブログ

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追悼 山野浩一

 

鳥はいまどこを飛ぶか (山野浩一傑作選?) (創元SF文庫)

鳥はいまどこを飛ぶか (山野浩一傑作選?) (創元SF文庫)

 

 

 

7月も後半になり、週刊競馬ブックに、上半期フリーハンデがそろそろ掲載される頃だな、来週はまだのようだが再来週なのか、などと思っていたところに、そのフリーハンデの主宰者である山野浩一氏の訃報に接しました。77歳でした。

氏の肩書としては、競馬評論家、SF作家、評論家ということになると思いますが、競馬のことでも、SFのことでもこの方の書いたものにはかなり影響を受けました。

 

競馬では血統辞典と競馬ブックに毎年掲載されたフリーハンデJRAのレーシングプログラムに連載されていてた「栄光の名馬」などの名馬物語。ジャパンカップの外国馬紹介というのも海外競馬の情報が乏しい時代にはありがたいものでした。

また馬主としても知られており、特にステイゴールドはその評価も面白いもので、2着が多かったのは一生懸命走って足りないまじめな努力家などではなく、フィジカルな面では凄いがちゃんと走らないというのがその実態だ、と看破しておられました。もちろんこの要素は産駒のオルフェーブルに受け継がれるわけです。

 

SFでは「X電車で行こう」「鳥はいまどこを飛ぶか」などの小説の他、「日本SFの原点と指向」などの評論もありますが、氏が真に偉大だったのはNW-SFを創刊したり、サンリオSF文庫の創刊にかかわるなどのオルガナイザー的な活動だったのではないかと思います。

NW-SF創刊号には、バラードの「内宇宙への道はどれか」という評論が掲載されましたが、この評論が日本のSF界に与えた影響は大きなものでした。

またこの雑誌から、川上弘美が出たというのも大きな功績でした。

 このNW-SFは1970年創刊、1982年の18号が最終号のようです。

小説はかなり全共闘の影があり、今となってはかなり古めかしいものとなっていましたが、評論やサンリオSF文庫のラインナップは未だに古びていないと思います。

近年、サンリオSF文庫創刊当時の事情について大森望氏のインタビューに答えられていましたが(「サンリオSF文庫総解説所収」)、よくぞ残してくれたという感謝の思いで一杯です。

 

また死の直前までブログを書き残していたことも驚きですが、その死を知った多くの方から、その死を悼む声が多く寄せられていることはその人柄ゆえでしょう。

 謹んで追悼の意を示したいと思います。