弁護士大久保康弘のブログ

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フィギュアスケート 2018世界選手権女子

フィギュアスケートの世界選手権が終了しました。

女子、男子とも、上位陣がフリーで大崩れするという信じがたい展開でしたが、順位からみれば、日本勢は女子2位、3位とダブル表彰台、男子は2位、5位と予想以上の好成績でした。

今回は女子のレビューをお送りします。

 

さて今回の世界選手権のレビューは、通常のパターンのものは五輪のレビューで書いたので、同じようなパターンでのレビューは芸がないので、今回はテーマごとにまとめてみました。

 

<五輪と世界選手権> 

 

五輪がある年の世界選手権はなかなか大変です。通常の年であればヨーロッパ選手権なり四大陸なり、全米選手権なりが終わるのが1月中旬、世界選手権は3月下旬ですから、かなり間が空きますが、五輪が終ってから世界選手権まで1か月くらいしかありません。また五輪の後では取材やメディアへの出演も多く、練習時間もなかなか取れません。調整が大変です。

 

<SPの主役、コストナー>

という問題点はあるにしても、SPでは実力者が順当に上位を占めていました。

特に素晴らしかったのが地元イタリアのコストナー。しかし彼女はトリノ五輪から五輪は4大会出ているわけですから、驚異的に息が長い選手です。今回は何と3F+3Tを決めて80.27、史上3人目のSP80点台を出しました。SPの時点での主役はまさにこの人。しかしこの3F+3T、なんで引きの映像だったのでしょうか。

 

SP2位はザギトワで、3Lz+3Loの連続ジャンプが乱れたため、79.5180点台には乗りませんでしたが、それでも首位と0.76差ですからまだまだ逆転の可能性があるポジションにつけました。

そして3位宮原。五輪より動きが硬く、連続ジャンプの2つめは明かな回転不足でしたが、何とか74.36

4位オズモンドは72.73と今回は宮原より下。5位ソツコワ71.80、6位デールマン71.61までが70点台で最終グループ入り。

一方、樋口は65.89、長洲未来は65.21。両者ともミスがあり60点台とあまりいいスタートとはいえませんでした。

 

<フリー SPと2本揃えることの難しさ>

 フリーを見て感じたのがこれです。

SP8位の樋口は第3グループでの演技となりましたが、これが素晴らしい演技で、、フリーで145.01、トータル210.90と高得点で、第3グループを終えた時点で首位に立っていました。ただ、最終グループの選手のポテンシャルからすれば、メダルをとれるかどうかはまだまだ分からない状況でした。

そして最終グループ。第1滑走はオズモンド。五輪で銅メダルをとったことから示されるように、昨シーズンあたりからかなり評価が高くなって、まあちょっと高すぎるきらいがありますが、今回もなんと150.50と高い得点でトータル223.23と樋口を12点上回りました。

ソツコワは少しジャンプのキレが悪く回転不足を取られてしまい124.81。デールマンも冒頭の3T+3Tは素晴らしかったのですが、直後の3Lzでダブルになるなどジャンプが乱れ、昨年の世界選手権のような溌溂さがなく、125.11という点数に終りました。

ここまでオズモンド、樋口の順となりましたが、まだまだそれでは決まらないだろうという感じでした。

宮原は五輪のように全てのジャンプを決めることができず、とくに後半になって疲れが出たのかうまくコントロールできず、3連続も着氷が乱れたのですが何とかこらえて連続ジャンプにすることができましたが、3Sが回転せずに転倒。これが残念でした。135.72とこの時点で3位。

さてザギトワ。ジャンプが全部後半なので緊張の瞬間は後半にならないとやってきません。しかし最初の3Lz+3Loで転倒し、その後は立て直せず。これはジャンプを全部後半にしたことで、ジャンプとジャンプの間隔があまりに短かったことも要因でしょう。高難度プログラムはリスクも高いことの証明であり、今回の失敗は、逆説的に五輪の演技の凄さを証明しています。また後で本人が明かしたように、五輪後身長が何と3センチも伸びたということで、これでは感覚がなかなかつかめないのも仕方ありません。フリーは128.21に終わり、トータル207.72で5位に終りました。

最終滑走はコストナー。凄い歓声でしたが、冒頭の3Lzがダブルになってしまったことから、うん?という感じで、その後も少し足らないかなと思っていたら後半2Aが中途半端にしか跳べず、3Sも転倒して連続ジャンプが1つだけになってしまいました。ただステップシークエンスは素晴らしかったと思います。128.61とザギトワより少しだけ高い得点になり、トータルは208.88で4位。 

この結果、オズモンドが優勝、樋口が銀メダル、宮原が銅メダルと日本選手が2人表彰台に上がるという予想以上の結果となりました。

 

<樋口の戦い> 

さてここからは樋口の戦いに焦点を当てることにします。

樋口は早くからエース候補で、2014年にさいたまスーパーアリーナで開催された世界選手権のエキシビジョンで、日本のブライテストホープとしてトップバッターで出演しました。これだけでも印象に残るのですが、実はもっと驚くべきことがありました。演技途中で何と音が途切れてしまったのです。しかし樋口は意に介さずそのまま最後まで滑り切って見せました。

全日本に初出場したのはその次の2014-2015シーズンで、初出場でいきなり3位。中学2年生での表彰台は浅田真央以来ということで注目されました。その次のシーズンの全日本では2位、さらに次のシーズンの全日本でも2位と、この時点で宮原に次ぐ存在になったと言えました。

ところがその後の4大陸、世界選手権では思うような成績が残せず五輪シーズンを迎えることになります。五輪シーズンのグランプリシリーズは3位と2位でファイナル初進出。この時点では補欠から繰り上がりの宮原と樋口の2人が五輪代表へのアドバンテージを得たと考えられていました。

しかしファイナルは6位。これでアドバンテージはなくなり、結局全日本での一発勝負となってしまいました。

 

その全日本はSPの翌日の練習中に足を痛めた影響で残念ながら4位に終わり、2位の坂本とどちらが選考されるかとなりましたが、3位ならまだしも4位だと苦しく、坂本が五輪代表となり、樋口は世界選手権に出場することになりました。

さすがに落選のショックは大きく、なかなか練習に身が入らなかったようで、2月のチャレンジカップに出場し、優勝したとはいうものの、得点は203.94と五輪の坂本の209.71には及ばず、まだ回復途上の感がありました。

そして迎えた世界選手権。

ここで微妙に影響してくる別の大会がありました。それはクープ・ド・プランタンという大会で、世界選手権の直前の大会でした。ここには坂本、三原、白岩の3選手が出場しており、表彰台を独占しましたが、優勝した三原舞衣の得点は何と215.49。これは五輪では5位に入るような高い得点で、これが樋口にとってかなりのプレッシャーになっていたと思われます。樋口が世界選手権で好成績を挙げられなければ、何で三原でなく樋口を選んだ、と言われかねません。

このような状況で迎えたSPでしたが、3Lz+3Tで転倒してしまい、得点は65.89と伸び悩み、8位にとどまってしまいました。

ここでまた別のプレッシャーが。それは次年度の世界選手権の枠で、合計13位以内でなければ3枠は取れず。しかも次年度は日本さいたま開催ですので、何としても3枠がほしい。宮原がSP3位といい位置につけていましたが、それでも樋口がSPの順位から後退してしまえば2枠しか取れない可能性もかなりありました。

そんな中でのフリーでしたが、演技に向かうその表情は強気でした。冒頭の3Sから回転が速く、3Lz+3Tも完璧。そして後半の3Lz+3T、その後の2A+2T+2Loを決め力のこもったステップへ。演技を終えて号泣していましたがこれはうれし泣き。本人によればうれし泣きは初めてだということで、たしかにこれまで何回も悔し泣きを見てきた者からすればついに、という感があります。フリーは145.01、トータル210.90と高得点で、この時点ではまだ順位は分かりませんでしたが最終的に銀メダルとなりました。おめでとう。

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