弁護士大久保康弘のブログ

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読書とBGM(後編)

昨日に続き読書と音楽(BGM)の話です。

 

前回は作品そのものにインスパイアされた音楽や映画のサントラをBGMにして小説を読む話を書きました。

補遺として、音楽が先にあり、それにインスパイアされた小説の代表として、村上龍の「ストレンジデイズ」を挙げておきます。

 

 

ストレンジ・デイズ (講談社文庫)

ストレンジ・デイズ (講談社文庫)

 

 

前回書いた方法は、素晴らしい相乗効果がありますが、言って見れば当たり前の話です。それより自分にとって面白いのは、自分がこれまで聴いてきた音楽の中から「この小説、このエッセイにはこの曲は合うんじゃないか」という組み合わせを考え出すことです。うまくはまれば実に楽しいものがあります。

 

と、偉そうなことを言ってしまいましたが、組み合わせについて検討するまず最初の要素は、小説の舞台になっている国や地方がどこかということで、舞台になっている国や地方の音楽をBGMにすると雰囲気が出ます。

例えばスウェーデンの作家、スティーグ・ラーソンの「ドラゴン・タトゥーの女」をはじめとする「ミレニアム」シリーズには、同じスウェーデンプログレバンド、アネクドテンの、凍てつくようなダークな音楽がとてもよく合います。

 

 

ミレニアム 1~3 全6巻完結セット

ミレニアム 1~3 全6巻完結セット

 

 

 

暗鬱

暗鬱

 

 

また、アメリカの作家、コーマック・マッカーシーの国境3部作(2作目までしか読んでませんが)にはライ・クーダーの音楽が、ピート・ハミルのニューヨーク・スケッチブックにはアル・クーパーローラ・ニーロの音楽がとてもよく合います。

 

そしてそんな中で、自分で見つけたマッチングの最高峰と思っているのは、須賀敦子のエッセイとイタリアのプログレバンド、PFMの音楽です。

 

ミラノ霧の風景―須賀敦子コレクション (白水Uブックス―エッセイの小径)
 

 

 

須賀敦子の最初の単行本は「ミラノ霧の風景」であり、PFM(プレミアータ・フォルネリーア・マルコーニ)はそのミラノ出身のバンドですが、そのような表面的な一致だけでなく、両者ともに豊かな叙情性、上品さと情熱を兼ね備えているところがぴったりで、深い共鳴が起きてきます。とりわけ、PFMの世界デビュー作「幻の映像(Photos of Ghosts)」と、「ミラノ霧の風景」「トリエステの坂道」は最高のマッチングです。

 

Photos of Ghosts

Photos of Ghosts

 

 

須賀敦子自身の著作だけでなく、「須賀敦子のミラノ」など彼女の著作を現地にたどる大竹昭子さんの本などを読む時にもお勧めです。

 

あと、地域的なものではなく、ジャンル的に合うというパターンがあります。

ホラーやミステリなどのダークな雰囲気の作品にはダークな音楽が合います。これもある意味当然ですが、ただその中でもしっくりくる組み合わせは限られています。

ダークな小説の最高峰は、何と言ってもスティーヴン・キングの諸作ですが、これに合うのは

マイ・ダイイング・ブライドMy Dying Brideという、あまり有名ではない(Wikipediaにもメンバーとディスコグラフィーしか記載されていない)イギリスのドゥームメタルのバンドの曲。なかなか聴く機会がないと思いますが、このバンドの3作目Angel & The Dark River 、4作目LIKE GODS OF THE SUNの暗い感情のうねりがキングの作品によく合います。

  

Angel & The Dark River (Dig)

Angel & The Dark River (Dig)

 

 

今回の「読書とBGM」はこれで終わりますが、いいマッチングが見つかったらまた書くかもしれません。また別途、「車窓とBGM」についても書こうかなと考えています。