今回は中島京子「のろのろ歩け」を紹介します。
北京、上海、台湾とアジアの3つの土地での「新しい扉をひらく彼女たちの物語」(単行本の帯から。ちなみに単行本の表紙は上のものとは違って女性が跳んでいます。文庫本の表紙は3つ目の物語の舞台の平渓線のイメージ)。裏表紙に「慢慢走」という言葉が書いてあります。
最初の「北京の春の白い服」 1999年の北京ではファッション誌の創刊に奔走する女性を描いています。冒頭に「-いまはもうない北京に」とあり、いきなり主人公の恋人の説教めいたメールから始まります。日本の女性はどうあるべきかとか、中国に対してとるべき態度とかを説教してくるのですが、残念ながらこの男性の考える中国はもうないのです。
「時間の向こうの一週間」2012年の上海では現地に赴任することになったため家探しを引き受けた女性と案内を引き受けたイーミンという男性との淡い関係を描いたもので、ラストで「実は」ということになります。
「天燈幸福」は台湾に亡き母の「おじさん」に会いに行く女性が描かれています。
3つめの「天燈幸福」は台湾のローカル線である平渓線に乗るという話で、もともとこの本を読むきっかけとなったのは、今年の3月に台湾に旅行して平渓線の駅の近くでランタンを飛ばしたことがあり、たまたまこの小説がそのあたりを舞台にしていることを知ったので読もうと思ったのでした。その旅行の時も、本当は平渓線に乗りたかったのですが、団体旅行でありバスで行かざるを得ず、まあ20年以上前に一度乗ったことがあるのでいいかと思いましたが、この作品を読んでやはり平渓線に乗っておけばと思いました。
この作品中に平渓線を途中下車して鉄橋の上を歩く場面がありましたが、こんな鉄橋でしょうか。
途中で主人公たちは大華という駅で下車し、そこから歩くと十分大瀑布があります。私もこの滝を見ましたが、「大瀑布」は少し大げさな感があります。
十分駅から再び列車に乗り、線路の両脇に商店街があるところに出ます。2月に旅行した時には、ここに並んでいる店でランタンを飛ばしました。