「大東亜共栄圏」は松岡洋右が公表したもので、言葉としてはよく知られたものですが、ではどういう経緯で公表されたかはそもそも忘れられている。それは大戦がドイツの勝利により終結した場合、東南アジアに日本の確たる勢力圏を作らなければならないという情勢から生み出されたものであり、これは、もうすぐドイツが大戦に勝利してしまう、という当時の危機感を理解しないと分からない、ということが主張されています。
また「八紘一宇」という語がどのように大東亜共栄圏の根拠として使われるようになったかも詳しく検討されています。
さらに後半では、作家などの異文化体験について述べられていますが、ここはあまり面白くなくて、やはり冒頭の部分が白眉でしょう。
なおこの本では「これだけ読めば戦は勝てる」という辻政信が執筆したとされるパンフレットが紹介されています(136頁)。一度は読んでみたいものです。