森見登美彦の「夜行」をようやく読みました。
この本は以前、直木賞にノミネートされたときに取り上げたことがあります(2017.3.2恩田陸と森見登美彦)。
そこでは、鞍馬の火祭の夜に忽然と姿を消した彼女、というところから始まるらしいので、それなら、私自身が以前、鞍馬の火祭の日に体験したことと同じなので、オチがそれと同じだろうと思って読まないのだ、というようなことを書きましたが、今回読む機会があり、読んでみるとそんな話ではありませんでした。失礼しました。
まず舞台になるのが尾道。第一章ではなく第一夜となっています。以下、第二夜奥飛騨、第三夜津軽、第四夜天竜峠、第五夜鞍馬と続きます。
そして岸田道夫という画家の連作銅版画「夜行」をめぐる奇妙な話をそれぞれ異なった語り手が語ります。
最後に世界が反転してしまうところが面白い。
ところでこの本を手に取ってみるとカバーがなかなか凝っています。表紙は海の向こうに島があり、その間の海はまるで川のようだという尾道の風景ですが、それが右に続きそのまま裏カバーに続いています。そしてその裏の風景は、この作品の第二夜奥飛騨のような風景になっています。
いろいろと楽しめる作品でした。