このブログはこれまでほとんど法律のことについては書いてこなかったのですが、今回から「誤解されやすい法律用語」というシリーズを始めたいと思います。
第1回は、「陳述と擬制陳述」です。
これを取り上げようと思ったのは、この本を読んで誤解があると思ったからからです。
この本の中に、裁判のシーンがあるのですが、裁判の第一回口頭弁論期日において、裁判官から、「原告代理人、陳述は擬制されますか」というシーンがあります(273頁)。そしてそれに続き、陳述の擬制とは、そもそも書面で提出しているものを法廷で読み上げたことにするという、いわば省略である、との記述があります。
つまり作者は、訴状を全部読みあげるのが陳述で、全部読み上げないのが擬制陳述と考えているようですが、そうではありません。
そして擬制陳述は、第一回口頭弁論において行われるもので、口頭弁論の期日が、被告の都合を聞かないで指定されることから、被告代理人が答弁書を事前に提出しておき、裁判所に擬制陳述にする旨、伝えておくことで、口頭弁論期日に答弁書を陳述したと同じ扱いとするものです。つまり被告代理人は出廷しないときの制度です。出廷していないとできない陳述を出廷しないで同じ扱いとするのが擬制陳述です。
民事裁判の法廷を傍聴に行くと、「陳述します」という発言がよく聞かれますが、内容については全く分からないことが多いのですが、要は内容は書面に書かれているだけだからということです。
なおこの場面は私が読んだ版ではそうなっていましたが訂正されている可能性もあります。