先日読んだ本です。
著者の川崎賢子氏は「宝塚というユートピア」などの著作があります。
この本は日経新聞で紹介があったので読んだみました。山口淑子の評伝的なものを期待したのですが、彼女の全体像を示すものではなく、個別の論点をいくつか取り上げるという構成になっていました。
その論点の中で、興味深い点は2点でした。
まず前半で語られる山口淑子の父について。これまでは見過ごされてきた論点ですが、確かにここで明らかにされたいろいろな優遇を見ると、相当なコネクションのある人物であることが分かります。
そして張愛玲の「色、戒」について触れられた箇所も面白く読めました。映画「ラスト・コーション」の原作で、映画は公開当時に映画館に見に行きました。ラスト近くの巨大な黒い穴が恐ろしく、今でも記憶に残っています。
驚くのはこのストーリーがほぼ実話ベースだということで、上海にあった特務機関の丁黙邨の暗殺未遂事件がベースになっています。
丁に近づき暗殺しようとした鄭蘋茹は、雑誌の表紙にも登場したことがある中国人と日本人の両親を持つ美女で、李香蘭を想起させるところががあります。
作者の張愛玲と李香蘭は1945年7月に対面していますが、後の山口淑子は張のことを何も語っていません。