弁護士大久保康弘のブログ

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笠置寺

 

今日はかなり暖かくなり、午前中を使って少し遠出をすることにしました。

笠置寺まで行くことにしましたが、その前に月ヶ瀬の梅林に行きました。

柳生までは行ったことがありますがその先は初めて走る道です。

坂を下るとダム湖が見えてきて、その湖岸に梅が咲いていました。

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散策路もあったのですがそこまで行かずに柳生まで戻り、北に曲がるとヘアピンカーブが連続する道があり、下って行くと笠置の町の住宅街に出ます。住宅街の途中に笠置山に行く車道があるのですが、急こう配の細い道でヘアピンカーブもあり、対向車も来たのでかなり神経を使い、山上に着いたときには汗をかいていました。

駐車場から少し上がったところに山門があります。

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入山料を支払い修験場めぐりに出発。まず現れた磨崖仏は本尊・弥勒が現れますがこれは摩滅してよく分かりません。

 

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次の虚空蔵菩薩磨崖仏は、線がよく分かります。

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 ここから巨石のある道を通って行くのですが、斜めになっている岩の間を通らなければならないところは大変でした。

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 こんな難関を通り抜けて頂上に出ました。見晴らしがよくて風が気持ちいい。

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山上からの眺めですが、川の右岸に鉄道が通っており、ちょうど列車が通ったので撮影したのですが、分かるでしょうか。

 下は拡大写真。

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そこからは少し下りになり、最後に後醍醐天皇の行在所跡に行きました。石段を上った上にあるのですが、上がるのはご遠慮くださいと書いてはありましたが、ここに行かないと笠置寺に行った意味がないので上って行きました。行ったところで何もないのですが、天皇陵などのように仕切ってあるのが、聖なる場所という感を与えます。

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 一周すると30分以上かかりましたが、気持ちよく汗をかくことができました。

 

「五色の虹-満州建国大学卒業生たちの戦後」

 前回は「大東亜共栄圏」でしたが今回は満州国についての本。

五色の虹 満州建国大学卒業生たちの戦後

五色の虹 満州建国大学卒業生たちの戦後

 

 この「五色の虹」は満州建国大学卒業生に対する聞き取りを中心として満州建国大学の実像を探ったものです。存命の方でもかなり高齢になっておられるので、ほぼラストチャンスを生かしたものとなっています。

以下、自分のための覚書として、各章ごとの登場人物を書いておくことにします。

序章「最後の同窓会」に続いて、新潟(宮野泰)、武蔵野(宮沢恵理子、石原完爾)、南東京(藤森孝一)、神戸(百々和、森崎湊)、大連(楊増志)、長春(谷学謙、山口淑子)、ウランバートル(ダニシャム)、ソウル(姜英勲、元韓国首相)、台北(李水清、辻政信)、中央アジアの上空で(ジョージ)、アルマトイスミルノフ、宮野)とそれぞれの場所に卒業生を追って聞き取りをしています。なお、宮沢恵理子は研究者、石原完爾、山口淑子辻政信満州国にゆかりの人物です。

実に手応えのあるルポルタージュで、労作といえます。 

河西晃祐「大東亜共栄圏 帝国日本の南方体験」

 

大東亜共栄圏 帝国日本の南方体験 (講談社選書メチエ)

大東亜共栄圏 帝国日本の南方体験 (講談社選書メチエ)

 

 「大東亜共栄圏」は松岡洋右が公表したもので、言葉としてはよく知られたものですが、ではどういう経緯で公表されたかはそもそも忘れられている。それは大戦がドイツの勝利により終結した場合、東南アジアに日本の確たる勢力圏を作らなければならないという情勢から生み出されたものであり、これは、もうすぐドイツが大戦に勝利してしまう、という当時の危機感を理解しないと分からない、ということが主張されています。

また「八紘一宇」という語がどのように大東亜共栄圏の根拠として使われるようになったかも詳しく検討されています。

さらに後半では、作家などの異文化体験について述べられていますが、ここはあまり面白くなくて、やはり冒頭の部分が白眉でしょう。

なおこの本では「これだけ読めば戦は勝てる」という辻政信が執筆したとされるパンフレットが紹介されています(136頁)。一度は読んでみたいものです。

アナと雪の女王を見て

先週の土曜日、地上波でアナと雪の女王が放映されたので見ました。

 

若い女性に絶大な支持を得られた作品として知られていますが、なぜあれだけ子供以外の若い女性に大ヒットしたのかよく分かりませんでした。

「真実の愛」がエルザを救う、というテーゼはいいのですが、その真実の愛は、これまであったもので、それを思い出したので救われたというのは、なんだかなあと思いました。

また、雪の女王たるエルザは、物を凍らせる能力も凄いのですが、見事なお城を設計・施工したわけですから、建築家ないし工務店としての能力が絶大だったのではないでしょうか。そこが人気のポイントでしょうか(違

 

京都文化博物館「戦国時代展」と金戒光明寺、西翁院

 

ようやく暖かくなり、時間も取れたので、思い立って午前中、京都に行くことにしました。何かイベントがないかなと調べていたら、 京都文化博物館で「戦国時代展」というのをやっており、来週商工会議所の「戦国時代が好きな方」というテーマの交流会に出席するので、これはちょうどいいやと思い行くことにしました。

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戦国時代展 ‐A Century of Dreams‐

sengoku-period.jp

着いたのは12時前でしたが、一階のエントランスは混雑しており、女の子の行列が。後で分かったのですが、3月1日から5日までは「刀剣乱舞DAY」ということで、毎日先着500名に「五虎退」のクリアファイルがもらえるとのことでした。筆者はよく知らないのでもらえませんでした。

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展示内容ですが、東京の江戸東京博物館米沢市の上杉博物館と共催のようで、なるほど上杉家文書が多かった。これらは国宝です。永徳の「洛中洛外図屏風」上杉本もありました。

国宝は他に伝徽宗「秋景冬景山水図」(金地院蔵)を見ることができました。

展示で心惹かれたのは、謙信とともに戦ったため、足に泥が付いたという伝説を持つ法音寺の「泥足毘沙門天」。

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その後、2階の展示室に行き通常展示を観ますが、ここは通常展示も見ごたえがあります。今回は東寺百合文書を見ることができました。ここでまたまた国宝をGETすることができました。 

さてせっかく京都に来て天気もいいのに展示だけ見て帰るのはもったいないので、京都冬の旅で特別公開中の金戒光明寺とその塔頭の西翁院に行くことにします。

 

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 金戒光明寺は、学生時代は行ったことがなかったのですが、近年、ここにはよく行くようになりました。何と言っても風格のある山門が見事ですが、大通りから少し入ったところにあり、少し目立たない場所にあるせいか、いつもあまり観光客がおらず、混雑していないので、何度も行きたいという気持ちにさせるところです。

今回の展示では、若冲の「宝珠と槌図」を見ることができました。

また庭にも出ることができて、春の日差しが気持ちよかった。

 

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続いて塔頭の西翁院に行きます。「淀看席」という重文の茶室が見ものですが、外から短時間覗くだけで多少物足りなかったのですが、まあ金戒光明寺と合わせて一本ということで。

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下の写真は西翁院からの道です。

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 帰りの京阪でクロスシートに座って昼寝しようと思っていたのですが、残念ながらロングシート部分にしか座れませんでした。でも寝ましたが。

 

恩田陸と森見登美彦

1月に直木賞の発表があり、恩田陸須賀しのぶ森見登美彦垣根涼介冲方丁の5氏がノミネートされ、恩田陸さんが受賞しました。

恩田陸さんの作品は、少し前まではかなりよく読んでいたのですが(「ねじの回転」「月の裏側」「昨日の世界」など)、最近の作品については情報を得られていなかったのですが、よかったです。

 特に面白かったのが、「ねじの回転」です。

ねじの回転―February moment (上) (集英社文庫)

ねじの回転―February moment (上) (集英社文庫)

 

 

ねじの回転―February moment (下) (集英社文庫)

ねじの回転―February moment (下) (集英社文庫)

 

 「ねじの回転」は2.26事件を題材にしたタイムスリップ物で、なぜか似たような設定の話を宮部みゆきも書いていて(「蒲生邸事件」)、この2作とも石原完爾が重要な役で登場するという共通点もあります。この2作についてはいずれ改めて取り上げてみたいと思います。

 

一方、残念ながら受賞を逃した森見登美彦については、申し訳ないのですが、どうもあまり読む気がしません。なぜかというと、私も同じように学生生活を京都で送っており、ちゃんと読んでいないのですが、どうも同じようにだらだらした生活を送っている男子学生の話が多いようで、それならもう充分体験しているので、いまさら同じような話を読んでも仕方ないだろうという気がするからです。それに、同じような学生生活を送ってきた身からすれば、少し前のエントリにて取り上げた「ハローサマー・グッドバイ」を読むより森見登美彦の諸作を読む方がもっと恥ずかしい気持ちになる(だろう)からでした(「ハローサマー・グッドバイ」のような出来事を体験していれば恥ずかしいが、無かったので読んでも恥ずかしくないのです。あれを恥ずかしいというのはリア充ですね)。

 

 

さて今回の直木賞森見登美彦ノミネート作は、「夜行」。残念ながらまだ読んでいませんが、毎朝見ているめざましテレビでよくCМが流れています。

 

夜行

夜行

 

 

によれば、その内容は 

--僕らは誰も彼女のことを忘れられなかった。

 私たち六人は、京都で学生時代を過ごした仲間だった。
 十年前、鞍馬の火祭りを訪れた私たちの前から、長谷川さんは突然姿を消した

 

というもののようです。

 

先に述べたように、森見登美彦の作品は私が体験した学生生活と同じような話が多い(らしい)のですが、これも例外ではなく、私の学生時代の体験と重なるのでした。

 

私も学生時代に鞍馬の火祭を何人かの友人(男)と見に行ったことがあり、待っている間は寒かったのですが、たいまつが登場すると結構暑くなってきたのを覚えています。祭りが終わったので叡電で帰ろうとしたところ、一緒に行ったうちの一人が行方不明になってしまいました。

 

混雑しているので探し出せないし、まあ駅も近いので遭難することもないだろうと、見捨てて電車で帰りましたが、寒くなってきたので、途中の一乗寺の駅(ラーメン激戦区と言われる)で下車してラーメンでも食べて帰ろうということになり、一乗寺の駅で下車し、「天天有」というラーメン屋に入りました。

するとカウンターで、その行方不明になった友人が先にラーメンを食べていたのでした。

 

「夜行」もそういう話ではないかと思いますが、もし違っていたらすみません。

 

安部龍太郎「等伯」

今回は安部龍太郎の「等伯」を取り上げます。

この作品は日経に連載され2012年の直木賞を受賞していますが、これまで読んだことはなく、たまたま何か時代小説を読もうと思っていた時にこの作品に思い当たり、読み始めたのですが、ちょうどタイミングよくNHKの「日曜美術館」で「熱烈傑作ダンギ等伯」が放映されることを知り、それを見てから下巻を読みました。

等伯 上 (文春文庫)

等伯 上 (文春文庫)

 

 

 

等伯 下 (文春文庫)

等伯 下 (文春文庫)

 

等伯能登に長谷川信春として生まれ、絵仏師として活動していましたが、やがて上洛します。

能登の時代は、信春が後の等伯であることすら最近証明されたことからも分かるように、記録はほとんどなく、ただ作品が残るのみです。

上洛した頃は、信長と浅井・朝倉が戦っていた頃で、この小説では等伯戦乱に巻き込まれ、比叡山の焼き討ちにも居合わせ、そこで九死に一生を得ていましたが、このへんはフィクションなのでしょう。

最終章は、日本美術の最高峰のひとつである「松林図」の創作を描いています。早世した息子の久蔵の死の後で書かれたこの画を完成させるところで小説は終わっています。

「松林図」ですが、遠近法も使わず、奥行きが感じられない二次元的な当時の画の中で、ただひとつこの画だけは三次元的な奥行もあり、さらに三次元を超えて、時間軸まで含まれた四次元的なものを感じさせます。

 ほとんど史料もないなかでよく等伯の人生をフィクションとして描いたと思います。