Amazon小説家の西村賢太氏が亡くなりました。突然の訃報だったので驚いています。
どうしようもない自分、を描く私小説の系譜を継ぐ者として、もしかしたら最後になるかもしれない存在でした。
時折、思い出したように西村氏の小説を読みたくなることがあります。
彼の小説は、悲惨な状況を描いていても、なんとも言えないおかしみがあるところが好きでした。
その代表例として、「肩先に花の香りを残す人」という作品があります。
題名からすれば、何か優雅な感じがするのですが、実は主人公が匂いに人一倍敏感であったせいで、同棲していた彼女と香りのせいで喧嘩になる、という話でした。
題名のおかしさと言えば、処女作である「けがれなき酒のへど」もそうです。これも作者の妙なこだわりが独特のおかしみを醸し出しています。
西村は、「苦役列車」で芥川賞を受賞しましたが、私はこの作品は評価していません。単純に辛いだけの日々を綴っており、先ほどから書いている「おかしみ」がない単純な作品で、あまり面白くなかったからです。
代表作は先ほど触れた「けがれなき酒のへど、「どうで死ぬ身の一踊り」というところでしょうか。
まだまだ小説を書き続けてほしかったので、とても残念です。