先日、東近江簡易裁判所に行ったついでに永源寺、石塔寺、石馬寺をめぐりましたが、そのあたりの地域を舞台にした2作を読みました。
一つはこの梨木香歩の小説。
時代は明確には書いていないのですが、205頁に、
「昔からの友人が今、土耳古にいる。(中略)村田というその友人は」と書かれているところから、1999年頃ではないかと思われます(村田エフェンディ滞土録」。
この作品は「家守奇譚」という作品の続編ですが、前作は山科に近い疏水あたりが舞台で、東近江は出てきません。「冬虫夏草」の後半では、東近江、永源寺のさらに奥の方の茨川、君ヶ畑に分け入ります。
ラスト近く、「おやど いわな」に着いた主人公が、銅色の鏡のようなものを見たイワナ夫婦が、「帰らはったんや」「お帰りにならはった」と言って宿を出て急いでどこかに行くシーンが印象的でした。
続いては白洲正子。この人は近江を訪れることが多く、近江山河抄という作品もあります。今回はこのかくれ里。
湖東だけを取り上げているわけではないですが、石塔寺、石馬寺を取り上げているのでここで取り上げて見ました。
まずは石馬寺。「石の寺」という章で取り上げられています。
「中で私の興味をひいたのは、水牛に乗った大威徳明王であった。等身大一木造りの、のびのびとした彫刻で、ことに水牛がすばらしい。頭をちょっと左にかたむけ、恭順を示しながら、一朝事あれば飛び出しそうな気配である」
と記されています。
また石塔寺は、「石をたずねて」という章で触れられています。
「石塔寺へ最初に行ったのは、ずいぶん前のことだが、あの端正な白鳳の塔を見て、私ははじめて石の美しさを知った」
と記されています。
また私は訪問していないのですが、「冬虫夏草」で主人公が訪れた君ヶ畑を訪れたのが「木地師の村」という章で、ここはまさに「かくれ里」というに相応しい場所だと思い、味わって読んでいました。