弁護士大久保康弘のブログ

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時刻表にない鉄道その2 英彦山スロープカー

前回は、宮ケ瀬ダムのケーブルカーであるインクラインを紹介しましたが、今回は 、福岡県、英彦山のスロープカーを紹介します。 

この「スロープカー」は一般名称ではなく、嘉穂製作所というメーカーの商標です。

スロープカー - Wikipedia

 これはとにかく坂に強く、石段や、急坂を登っていかなければならないような場所に設置されています。近年かなりの勢いで増殖中です。

高速バスの乗り場までというものや、霊園や寺などに設置される例が増えているようですが、かなり大掛かりなものもあり、それらにはぜひ乗ってみたいと思います。

 

さて本題の英彦山スロープカーですが、これについては以下のページで紹介されています。

http://www.hikosan-slopecar.info/p2.html

ここにあるように上下2つの区間に別れており、線路延長は849メートル、所用時間15分となかなか規模の大きいもので、乗りがいがあります。

私がここを訪れたのは2013年10月18日で、日田の裁判所に所用がありその帰りに立ち寄ることにしました。

最寄り駅の英彦山までは、日田彦山線というローカル線で行くのですが、日田でなく4駅先の大鶴駅から乗車しました。ここは青春18きっぷのポスターにもなっています(2001年春)。先日のブログでも紹介しました。

okubolaw.hatenablog.com

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さてこの駅から14:24発の列車に乗り、トンネルを超えて、14:45彦山着。

駅前からは町営バスが出ており、これでスロープカーの乗り場まで行くことができます。

バス停は鋼の鳥居前となっており、鳥居があります。この近くにスロープカー乗り場があり、幸駅と名付けられています。

ここからスロープカーに乗車します。運行間隔は20分毎でここからは便利です。大きな駐車場がありここまでは車で来ることを想定しているのでしょう。

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下の乗り場、「幸」駅です。

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途中の花駅で乗り換え。ここからは複線になります 。

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このような感じで登っていきます。

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一番上の神駅。

 

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神駅に上ってくるスロープカー。

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神駅の駅舎。

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さらに少し上に行くと英彦山神宮奉幣殿があります。

 

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 奉幣殿むに参拝して、再びスロープカーに乗車して、下の幸駅まで降りてきたら16:50頃でした。

問題はどうやって彦山駅まで帰かです。先ほど述べたように、幸駅には駐車場があり車で駅までくることを前提としており、日田彦山線との連絡はほとんど考えられておらず、行きに乗車した町営のバスも早くに終わってしまっています。タクシーは彦山駅にはおらず、さらに2駅程度先からしかこないということで、少し遠いが歩くしかありません。

グーグルマップを見ると駅まで5.3キロメートル、徒歩で1時間10分くらいということで、これは何とかなると速足で歩き出しました。

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幸い、すべて下りの舗装道路だったのでとても歩きやすく、速足で歩いてもさほど疲れず、一度も休憩せず彦山駅まで歩き通せたので、予定より早くに彦山駅に着きました。

一休みして、予定していた18:19発の列車に乗ることができ、19:46小倉到着。その日のうちに家に帰ることができました。

ここは距離も長く乗り甲斐もありますが、事前に十分計画されて訪問されることをお勧めします。

 

京都2017春の特別公開(厭離庵、鹿王寺、遍照寺、妙光寺)

 

 

毎年ゴールデンウィークと秋には京都の非公開寺院の特別公開があります。

ゴールデンウィークには大学のサークルのOB会があるので、毎年その日の昼間に京都に行き、非公開寺院を訪問することにしています。

今年は、4月29日に嵯峨野の厭離庵、鹿王寺、遍照寺、妙光寺の4か寺を訪問しました。

JR京都駅から嵯峨野方面に行くには、バスもありますが時間がかかりすぎるので嵯峨野線に乗り換えるのがお勧めです。車内は結構混んでいましたが何とか座って17分で嵯峨嵐山に到着。北出口は閑散としており、ゴールデンウィークとは思えません。途中でカレー西原という店があってお腹が空いていたのでそこでカレーを食べて清涼寺方面に歩き、境内を横切って住宅地を歩きます。今回は案内の看板が出ていたので分かりましたが、看板がないと気付かないような道を奥に入ると厭離庵があります。

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ここは藤原定家の小倉山荘の遺跡として知られています。

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時雨亭、本堂とも古いものではありませんが、藤原定家の山荘を偲ぶことはできます。

しかしここを拝観していると雷が鳴り、雨が降ってきました。

 

続いて鹿王寺に向かいます。天気がよければ歩くところですが、雨が降ってきたので嵐山までバスに乗り、川沿いのバス停で下車しましたが、川沿いなので強い風が吹き、傘も差せない状態でしたが、何とか歩いて鹿王寺にたどり着きました。

 

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 この鹿王寺は嵐電の駅名にもなっており、名前は以前から知っていたのですが、これまで訪問したことはありませんでした。結構広く見処も多くありました。

本堂では釈迦如来像と十大弟子の他に、足利義満像も興味深く拝観しました。

また屋根がついた通路でつながっており、雨でも濡れずに行ける舎利殿もなかなか見応えがあり、安置されているのも仏牙舎利とひと味違います。

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 客殿に戻り、庭園を見て休んでいるうちに雨が上がり、晴れてきました。借景としている嵐山(下の写真の右上)も見えなかったのが見えるようになりました。

 

 

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ここからは歩いて遍照寺へ向かいます。それほど距離はありません。

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 ここでは重文の赤不動明王、同じく重文の十一面観音を拝観することができました。

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さて遍照寺から本日最後の訪問箇所である妙光寺に行きますが、ここは結構離れており、どう行けばよいのかなかなか難問でした。グーグルマップによれば歩くと30分くらいかかるとのことで、晴れているので歩いてもいいのですが、ただそれだと着くのが4時ちょうど位になってしまい、4時までの拝観時間までに間に合わない可能性があります。

歩いていると広沢池に出ました。

 

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広沢池のほとりを東に歩いていき、池から離れ少し上ると交差点に出て、それを渡ると山越のバス停があったので時刻表を見たら何と1分後にバスがあるとのこと。これはラッキー、バスも時間通りにきて、これなら3時40分くらいに着きます。

福王子でバスを下車し、神社の横の道を歩いていくと妙光寺がありました。

荒れ果てた感じがしますが、中に入れば見事な枯山水の庭がありました。 

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 門から入ると荒れ果てた感じの空間が拡がります。 

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 しかし本堂に入ると見事な枯山水の庭がありました。

 またここは南朝とかかわりが深く、後醍醐天皇の時代に三種の神器が安置されたといわれています。

帰りに仁和寺の桜を見られないかと思って立ち寄りました。

「泣き桜」という一本だけ花が残っていました。

 

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今回は仏像という面では若干物足りない気がしましたが、とにかく普段であれば訪れない寺院を訪れることができて有意義でした。5月7日まで開催されます。

 

青春18きっぷポスター展@奈良県立美術館

奈良県立美術館の1階で「青春18きっぷ ポスター展」が開催されています。

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3日の朝、たまたま新聞を見ていたらこの青春18きっぷ ポスター展」が奈良県立美術館で開催されていると知り、ちょうど奈良国立博物館に行くので帰りに寄ってみたのですが、これが素晴らしかった。というかアラーキーが素晴らしかった。

青春18きっぷは1982年からありましたが(最初の1年だけ「青春18のびのびきっぷ」でした)、展示されたポスターは1990年(平成2)からの展示です。

 

1991年夏のポスターからアラーキーが起用されます。

最初の2枚は組写真でしたがそれほど枚数は多くありませんでした。

1991年冬のポスターは、

小海線、「この街とヒミツをつくる。」

「青春18きっぷ ポスター アラーキー」の画像検索結果

 

 

1992年から「旅少女」シリーズと名づけられた枚数の多い組写真となりますが、これが素晴らしい。まさにアラーキーの世界。

下はその第一弾、根室本線釧網本線版です。

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なんと60枚+1枚の写真で構成されています。 

その後、1993年春には奥羽本線大湊線

夏には紀勢本線参宮線

冬には 奥羽本線男鹿線

という4枚の「旅少女」シリーズのポスターは圧巻で見応えがあります。

ここでアラーキーの旅少女シリーズは終了しますが、その後、一枚もので1995冬 陸羽東線中山平駅付近、1996年春 紀勢本線という2シーズン、まるでアンコールのようにありました。

私はこの「旅少女」のポスターを見て涙が出そうになったのですが、アラーキーを見て泣いているのを見られたら恥ずかしいので必死で涙をこらえました。

 

1996年夏からのイラストの時期を経て、1997年から駅を中心とした一枚写真のポスターとなります。

このシリーズで印象に残ったのは1998年三角線赤瀬駅「もうひとつ先の駅が見たい」でした。

 

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その他、常連の下灘駅、空間が素晴らしい厚床駅もよかったのですが、これはと思ったのは紀勢線大曽根浦駅。尾鷲のひとつ南の小さな駅ですが、民家に溶け込んだような駅、その向こうの海、対岸の山という素晴らしい構図です。

「青春18きっぷ ポスター まとめ」の画像検索結果

 

また写真の出来というより、個人的に面白かったのは日田彦山線の大鶴でした。この駅は一度、ここから乗車したことがあります。日田の裁判所に用があり、裁判が終わった後で裁判の対象となっている現場を見に行ったのですが、そこからだと日田駅よりこの大鶴駅の方が近かったため、大鶴まで車で送ってもらいそこから小倉行の列車に乗ったのでした。周りには製材所と畑しかない駅でした。

 

 「青春18きっぷ ポスター紀行 大鶴」の画像検索結果

なぜかサイズの違う画像しかありませんでした。

なお、この展示は前期が5月7日まで、後期は5月9日から5月21日までとなっています。

 

奈良国立博物館 快慶展

今年の連休は前半が単なる土日で、実際には3日からという方が多かったと思います。実際に1日、2日は通勤時間帯の電車もいつもと変わらずでしたし、2日の午後の銀行は普段の週末より混んでいました。

さてそんな連休初日の3日、奈良国立博物館で快慶展を見ました。

 

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奈良公園はかなりの人出でしたが、ここは多少混んでいるかなという程度で、外の行列はありませんでした。

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さて入館して右手に進むといきなり代表作の一つである醍醐寺弥勒菩薩が。

弥勒菩薩坐像

これは細密感が素晴らしく、見応えがあります。

そしてボストン美術館蔵から里帰りした弥勒菩薩。 

弥勒菩薩立像

 他にもアメリカ・キンベル美術館から里帰りした釈迦如来像もありました。

そして、画像は入手できなくて貼れなかったのですが、清水寺奥の院秘仏本尊である千手観音を拝観できたのは幸せでした。これは醍醐寺弥勒菩薩に劣らず見応えがありました。千手の手に持っている髑髏や、光背の凝り方などいずれもため息が出るほど素晴らしいものでした。

 

次に兵庫県浄土寺のコーナーがありました。西陽に照らされる巨大な阿弥陀三尊で有名ですが、今回は裸形の阿弥陀如来が菩薩面とともに展示されていました。これは以前に行われていたお練り用のものということで、この菩薩面をつけたお練りを一度見てみたいものです

伊賀の新大仏寺の如来座像はいかにも大仏というつるんとしたもので、しかも頭部以外はは江戸期に作られたもので、これは大仏寺で見たいところ。どこにあるのかよく知らなかったのですが柘植の近くのようで、今度櫟野寺と一緒に行ってみようかと。

あと印象に残った仏像は、

金剛峯寺孔雀明王

金剛峯寺深沙大将

でした。

 

 奥に進んで、本日の国宝はこの僧形八幡像。

 

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東大寺では年に一日(10月5日)だけ公開されています。以前、たまたまこの日に奈良地裁に行く用事があったので東大寺に立ち寄り拝観したことがありますが久々の再会です。 

 

最後に、本展覧会とこの三寺を訪問すれば快慶マスター、というパネルがあり、

安倍文殊院浄土寺東大寺が挙げられていました。確かに安倍文殊院浄土寺の仏像がここに来ていればもっとすごかったのでしょうが、幸いこの2ヵ寺とも訪れたことがあり、記憶に残っていますので大丈夫。むしろ浄土寺のお練り用の裸形の阿弥陀如来を見ることができ、この展覧会だけでない快慶ワールドの広がりを感じることができてよかったと思いました。

さて、奈良国立博物館を後にして続いては奈良県立美術館の「青春18きっぷポスター紀行」に向かいます。これは別エントリにて。

2017春の天皇賞

4月30日、春の天皇賞を見てきました。

昭和の時代は4月29日の天皇誕生日に固定されていた春の天皇賞ですが、これが土日でない場合はテレビ中継の枠がないため、「3時のあなた」の途中で中継があった時もありました。古くてすみません。

前日は昼過ぎに雷が鳴り強風が吹き雨も降っていましたが、日曜日は好天に恵まれました。

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この春の天皇賞菊花賞は、京都競馬場で現地観戦することにしていますが、何と言ってもスタンド前を2回走るのが長距離戦の醍醐味です。

 

ということで1週目。ヤマカツの大逃げ、キタサンが2番手でスタンド前を通過。

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3コーナーあたりで早くもキタサンが先頭に並びかけます。

そして直線。重戦車のような堂々たる走りで他馬を寄せ付けません。f:id:okubolaw:20170502152556j:plain

そのままキタサンが押し切りました。

何とディープのレコードを0.9秒も更新する3分12秒5の大レコードが出ました。

ディープのように後方待機で強烈な追い込みをしてくる馬も強いと思いますが、キタサンの場合は雄大な馬体でもあり、力任せにハイペースでどこまでも進むという、切れ味勝負のサンデー系全盛の昨今には珍しいタイプの名馬です(自身サンデー系ですが)。

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レースが終わっても帰る人が少ないのも特筆できます。また、普段競馬を見に行くことがないような年配の女性が結構見に来ておられました。サブちゃんを見に来たのかな。

 

 

時刻表にない鉄道その1 宮ケ瀬ダム

今回から何回かにわたって、時刻表に乗っていない鉄道(のようなもの)の話を書いていきたいと思います。

私は「乗り鉄」なので、日本各地のいろんな鉄道に乗ってきましたが、JRや私鉄はほとんど乗ってしまったので、最近はもっぱら遊覧鉄道、保存鉄道などの時刻表に掲載されていない鉄道(のようなもの)に乗るようになりました。

また時刻表に乗っている鉄道のうち、2本のレールの上を走るのは通常の鉄道と変わらないのですが、動力が車両内ではなく外にあり、ケーブルで車両を引っ張っていくという点で特殊なものとしてケーブルカーがあります。このケーブルカーについても、時刻表に掲載されていないものがあります。

今回紹介する宮ケ瀬ダムのインクラインは、ケーブルカーの一種ですが、観光施設の一部であり、時刻表に掲載されていません。

 

この宮ケ瀬ダムを訪問したのは2010年の9月のことで、出張で箱根湯本に行った後に、午後の時間が自由に使えるようになったので、さてどこへ行こうか、と考えて思いついたのが宮ケ瀬ダムでした。以前に読んだ「知られざる鉄道」という本に宮ケ瀬ダムのインクラインが紹介されており、一度は訪問してみたかったからでした。

 

知られざる鉄道 決定版 (キャンブックス)

知られざる鉄道 決定版 (キャンブックス)

 

 

関西の人間にはこの宮ケ瀬ダム、場所が全く分からなかったのですが、箱根湯本から小田原を経由して小田急で本厚木まで行き、そこからバスに乗って行くことが分かり、じゃあ箱根からの帰りに寄るのにちょうどいいと思ったのでした。

 

宮ケ瀬ダムのインクラインは以下のページで紹介されています。

 乗り物案内|公益財団法人 宮ヶ瀬ダム周辺振興財団

 

このインクラインは、ダムを建設するための資材運搬に使われた施設ですが、完成後はダムの上下(山頂停車場・山麓停車場間)を結ぶケーブルカーとして活用されています。最大傾斜角は35度もあり、高低差は121メートルもあり、スケールが大きく乗りごたえがありそうです。

 

次の写真は下の駅から上を撮影したもの。すごい登りです。

 

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そしてこのように上っていきます。

この写真は上の駅から少し歩いた駐車場から撮影しました。 

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横から見るとこんな感じです。

 

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上まで行くとダム湖です。

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ということで、関西からはなかなか行く機会のない宮ケ瀬ダムで半日遊んで帰りました。

「ユーラシアニズム」と地政学

先日この「ユーラシアニズム」という本を読みました。 

ユーラシアニズム―ロシア新ナショナリズムの台頭

ユーラシアニズム―ロシア新ナショナリズムの台頭

 

「ユーラシアニズム」とは、ロシア中心主義の思想をその源流からたどった書籍ですが、中心となるのは、アレクサンドル・ドゥーギンという人物です。この人は日本ではほとんど知られておらず、ググっても

はてなブックマーク - CiNii 論文 - アレクサンドル・ドゥーギン, 『地政学の基礎 ロシアの地政学的未来/空間をもって思考する』, モスクワ, 1999年, 928ページ

という論文が出てくる程度です。ただ、この論文はよくまとまっており、この「ユーラシアニズム」という書籍が、なぜロシア革命直後から書き出されているのかよく理解できました。

 

このドゥーギンの思想の根底は「地政学」という学問です。

私が大学生の頃、地政学が一瞬だけ注目されたことがありました。当時、地政学を紹介してベストセラーになった本があり、私も買って読みました。タイトルも著者も全く忘れていましたが、ネットで調べたらわかりました。

 この本です。

 

悪の論理―ゲオポリティク(地政学)とは何か (Ohtemachi books)

悪の論理―ゲオポリティク(地政学)とは何か (Ohtemachi books)

 

 

 たしかこれを元にしたテレビ番組も放映されていたような記憶があります(今思い出したのですが、確か「ケースD」というキーワードがあったような)。

 

この地政学は、国家戦略に科学的根拠と正当性を与えるための学問ですが、ドイツ系と英米系の二つの流れがあるようで、マハンの海洋国家論、マッキンダーハートランド論などは英米系です。ただこのハートランド理論がドイツ系の理論に受け継がれ、カール・ハウスホーファー生存権理論の源流となったようです(このあたりはあまり調べず書いているので不正確かもしれません)。

ハウスホーファーは、もともと軍人だったようですが、政治学カール・シュミットと並んでナチスに重用された学者となりました。そしてこの2人のカールは、同じようにナチスドイツの敗北後には追われる立場になりました。

政治学は学問として長い歴史があるので、学問自体はナチスの敗北後も変わらず存在しただ親ナチスの学者が失脚したりしただけで、シュミットも逮捕されましたが、戦犯として訴追されず、しばらくの隠棲の後に復活しました。しかし地政学は、学問自体がナチスの侵略政策の根源であるとして抹殺され、1946年にハウスホーファーは自殺してしまいました。

しかしこの地政学ハートランド国家としてのロシアに継承され、今も国家政策に強い影響を与えている、というのがこの「ユーラシアニズム 」に書かれていました。

なおこのドゥーギンですが、トランプ大統領の支持母体の一つであるオルトライトの中心人物である、リチャード・スペンサーが主催するシンポジウムに、スカイプでゲスト出演していたことがあるということで、今後注目すべき人物の一人であることは確かなようです。