弁護士大久保康弘のブログ

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読書記録 「自民党ー「一強」の実像」「ポピュリズムとは何か ー 民主主義の敵か、改革の希望か」

今回は、最近読んだ本の中から政治関係の本を2冊取り上げます。 

いずれも最近、人文関係の優れた研究書を出している中公新書です。

自民党―「一強」の実像 (中公新書)

自民党―「一強」の実像 (中公新書)

 

 

自民党について手堅くまとめた研究書。各項目ごとに、研究の基礎資料とするにはいいが、通読するのはかなりつらかったです。舞鶴からの帰り、スマホの電池が切れたこともあり、何とか読みましたが。

 

 

この本も途中まではそれほど面白く感じなかったのですが、第4章の「リベラルゆえの「反イスラム」ー環境・福祉先進国の葛藤」という章になって、俄然熱を帯び面白くなりました。

この環境・福祉先進国とはデンマーク、オランダのことですが、著者がもともとオランダ政治の専門家だということもあり、かなり深く掘り下げられています。何より、この2つの国のポピュリズム政党が、極右とは明らかに距離を置き、デモクラシー的諸価値を前提として成立した政党だということである(107頁)という点が興味深い。

 

この両国は今やヨーロッパで最も移民に厳しい国に分類されているということですが、その原因は、この両国のポピュリズム政党の理論武装がしっかりしており、本来のヨーロッパのキリスト教に基づくリベラルであるがゆえに、イスラムとは対立せざるを得ないという主張をし、この主張が国家レベルでも認められていることにあるといいいます。

 

確かに、西欧諸国はキリスト教の価値観で成り立っており、それゆえ昔は十字軍などで衝突していたのでした。したがって、現代においていかに価値観の多様性を認めるべきとしても、キリスト教的価値観からすれば認められないイスラム教徒の振る舞い(特に女性を尊重しないこと)を、見て見ないふりをすることはできない。リベラルはなぜかイスラムの女性に対する扱いを容認するようですが、リベラルの自壊ではないでしょうか。

ひるがえってポピュリズムという言葉ですが、多様性の擁護とキリスト教的正義が対立するときに、多様性を擁護しないのはポピュリズムである、というのは明らかにエリートからの見下した言い方ですね。

 

このようにオランダのポピュリズムは、理論的にも水準が高く、単なる自分の国が大事ということではなく本質的な点をついている。
とりわけ、オランダのフォルタインという、労働党出身の性的マイノリティーが、転向して西洋的、啓蒙主義の理念による普遍的価値観からイスラムを批判するというのは、一本筋が通っています。そしてそのフォルタインが暗殺された後、その衣鉢を継いだウィルデルスの自由党も興味深い。


 あと、ヨーロッパ独自のポピュリズム勢力増大の理由として、欧州議会の活用ということがある(第7章)というのも有益な情報でした。

 

いろいろ示唆されることの多い本でした。

時刻表にない鉄道 その4 天橋立ビューランド

さて前のエントリで書いたように、舞鶴から天橋立に移動してスロープカーに乗りました。

天橋立駅で下車し、駅の裏手にある天橋立ビューランドへの乗り場に向かいます。

 

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天橋立ビューランドは山の上にあり、「モノレール」とリフトが選択できますが、私は当然モノレール(スロープカー)を選択。

  

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このように後部の窓からは天橋立が見えてきます。

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上まで上がるとこのような感じです。

 

山上駅に停車中のスロープカー。2両編成です。

 

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このように全景を撮影するのはタイミングの問題でなかなか難しいのです。

天橋立とスロープカーの両方を入れてみました。

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下に降りて駅前の温泉施設「智恵の湯」に入浴しましたが、普通で帰るための時刻を間違えて次の特急で福知山に。特急料金も勿体ないのですが、福知山を寝過ごすと大変なのであまり眠れなかったのが大変でした。

青春18切符の旅(3) 舞鶴

 

 

この夏も青春18切符を利用して日帰りの旅に出ました。今回の目的地は舞鶴

舞鶴に行くには綾部を経由しますが、綾部までは京都から山陰本線経由と、大阪から福知山線経由の二通りがありますが、行きは京都から山陰本線に乗りました。

嵯峨野を過ぎて、保津峡の新線区間を過ぎると、途中から山深いというより、緑の多い街道沿いを走り、右手から舞鶴線が近づいてくると綾部です。ここで乗り換え。待ち時間の間に、10時になったので、NHK杯の申込みをしようとしたのですがつながらず断念。

舞鶴線は西舞鶴までに駅が3つしかない短い路線です。西舞鶴北近畿タンゴ鉄道の乗り換え駅で構内も広いですが、東舞鶴は1面2線の高架駅になっています。

駅前でレンタサイクルを借りて、まずは中舞鶴支線の廃線跡のトンネルに向かいます。

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中に入るとこのように、向こう側から光が差し込み、まるで異世界への通路のようです。自転車で走るととても涼しい。

 

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トンネルを抜けると赤レンガ倉庫群が見えてきます。

  

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この中で営業しているカフェがあり、遊覧船の時刻までに食べることができそうなのでカレーを食べることにしました。

 

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舞鶴海自カレーというスタンプラリーが開催されているようで、12か所でいろんな鑑のカレーを食べられるようです。

私の前の人はスタンプを押してもらっていましたが、私は知りませんでした。

 

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このカレーは護衛艦「ふゆづき」のカレーということです。

 

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食べ終わって遊覧船に乗ります。先頭のオープンスペースに出ると、風が吹いて涼しいのが何より。

 

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涼しい船旅を楽しんだ後は、また猛暑の中、自転車で海軍記念館に向かいました。

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少し戻って自衛隊桟橋を見学。

 本日の目玉はヘリコプター搭載護衛艦「ひゅうが」。

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 海上自衛隊の桟橋ではこんな廃線跡を発見してしまいました。

 

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これで舞鶴観光は終わり、東舞鶴駅から西舞鶴に戻り、北近畿タンゴ鉄道に乗り天橋立を目指しますが、ちょうどあかまつに乗車することができました。

 

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このあかまつ、乗車料金は必要ですが、アイスコーヒーが飲めるので高くはありません。由良川鉄橋では減速して走ってくれます。

天橋立ではスロープカーに乗りましたが、これは別エントリにて。

 

帰りは福知山経由で帰りました。伊丹までは空いていましたが、伊丹から花火大会の帰りの人で混雑しました。

 

「氷艶」と「THE ICE」

先週から今週にかけてフィギュアスケート関係の放映をいくつか見ました。

まずはNHKBSプレミアムで放映された「氷艶」。

「氷艶 hyoen2017『破沙羅』」ビジュアル公開 

筋はよく分かりませんでしたが、芝居の国の英雄である義経と大悪人である仁木弾正が戦うという話。神話の時代の人物から江戸時代の仁木弾正までが登場する、時空を超えた戦いとなっていました。

 

なかなか面白かった。歌舞伎役者のみなさんもよく滑っていたし。 

チームラボの演出もよかった。


佐々木彰生君が出ていたのは知っていましたが、庄司理紗ちゃんもでていたのか。

この二人は全日本で印象に残ったシーンがあります。

佐々木彰生はなぜか観客席側で一人アップをしていたのを見たことがありますし、近くに座っていた人に応援のうちわを渡され、即席の応援団に加入して応援したものでした。

庄司理紗は大阪でのレジェンドオブフォールの好演技が今でも記憶に残っています。

2年くらい前でしたか、大阪のある場所でのイベント(氷上ではありません。たまたま知り合いに教えてもらい見に行きましたが、当日彼女が出ることを知っていたのは私だけだったと思います)で見かけましたが、少し大柄になりすぎたなという印象を受けました。

今回、元気な様子を見て嬉しく思いました。


また、村上佳奈子がなかなかいい味を出していたと思います。

 

さて 一方のTHE ICEですが、BSフジでオンエアされたものを見ました(完全版が日テレプラスでオンエアされるようです)。

 

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浅田真央メインのこのアイスショーは2007年にスタートし、今回で11年目となるようです。当初は愛知県だけの開催でしたが、5年目からは大阪でも開催されるようになり、大阪公演を一度見たことがあります。

 

今回は浅田真央が競技生活からの引退後初公演ということで注目されていました。昨年末に大阪で開催された全日本を会場で見ることができましたが、それ以来の演技となります。


目玉は「浅田真央メドレー」という、浅田真央がこれまで演じてきたプログラムを、他のスケーターが滑るというもの。これは好企画でした。

 

全体の印象としては、浅田真央の第2章の開幕というより、第1幕のフィナーレを飾る公演というべきものでした。


いずれにしても浅田真央の元気な姿をまた見ることができて良かったと思いました。

「怖い絵」展@兵庫県立美術館

8月中旬以降は体調がすぐれず、なかなかブログを更新することもできませんでしたが、ようやく更新する体力が戻ってきたので、これからまた頑張って更新していきます。

 

もう1か月前になってしまいましたが、8月12日に、兵庫県立美術館で「怖い絵」展を見ました。

展覧会を観る前にお昼を2件隣のJICAにて食べました。ここでは各国のエスニック料理が味わえます。

8月のセットメニューはシリア料理でした。

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左下のカレーのようなのは「バーミヤビルラッハマ」というマトンとオクラの煮込み。真ん中のライスのようなものは「アーアルアルーズ」という極細パスタ入りバターライス。左上はニンジンのチキンスープ。右上はデザートで「バルーザ」という牛乳とオレンジの二層のゼリー。右下は「ババガヌージュ」という茄子とゴマのペーストです。

 

展示もあり、今回は楽器の展示などを見ました。下は親指ピアノという名でも知られるカリンバ。キングクリムゾンの「太陽と戦慄」パート1の冒頭で聞かれる楽器です。

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さて会場へ。夏休みの土曜日とあってかなりの混雑でした。

 

下の絵は、「殺人」というもので題名、内容とも怖いのですが驚くのは作者。

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作者は何とセザンヌ。こんな絵をセザンヌが書いていたとは。

 

下はターナーの「ドルバターン城」。風景に「崇高」という概念を見出した作品とされています。

 

 

 

そしてこの展覧会の目玉ポールドラローシュ「レディジェーングレイの処刑。

 

 

夏目漱石も初期の作品「倫敦塔」の中で触れているように、王位についたものの、わずか9日後に廃位され7か月後に処刑されてしまうレディ・ジェーン・グレイの断頭の直前を描いたもの。

恐ろしい運命を前にして保たれた気品が圧倒的です。

またこの絵自体も長い間失われたものと思われており、今我々が見ることができること自体が奇跡的ということで、数奇な運命を感じさせます。

 

神戸では9月18日まで開催されています。

読書記録「意識高い系の研究」

この本は書いてあることそのものは面白かったのですが、ただし分析の前提となる枠組みがきちんと考えられていないのが勿体なく思いました。 

「意識高い系」の研究 (文春新書)

「意識高い系」の研究 (文春新書)

 

この本によれば「意識高い系」とは、具体的なスポーツなどを目的としたサークルではなく、抽象的な目的のサークルを立ち上げ、パーティーに参加してそれをインスタグラムやフェイスブックに上げるような人と定義しています。

ただボランティアとか海外交流などの要素もあると思うのですが、そこはそれほど触れられていない。

また著者によれば「意識高い系」の対概念は「リア充」であり、「リア充」とは、地元でずっと過ごして太い人脈がある人のことであり、彼女がいるとかいないというのは関係ないということでしたが、これはちょっとずれているのではないでしょう。

 

このような地元人脈系は「地元土着充実系」とでもすればよいと思います。またさらに附属からエスカレーター式に大学に上がった学生もリア充としていますが、これは単に「私立大学内部進学系」あるいは金持ちのボンボンとでもすればよく、この両者は、上昇志向不要という点で共通点がありますが、明らかに別種で区別すべきでしょう。

 

また「意識高い系」になってしまうのは、(著者の用語で言う)「リア充」になれないからそのリベンジというのですが、「意識高い系」はそれだけをルーツに持つのではないだろうと思う。ただ単に横文字にあこがれる奴(昔でいうとカタカナ職業というやつ。デザイナーとかエディタとか)というルーツもあるのではないか。またピースボートなんかもそうでしょう。 

 

問題は「三次元をあきらめた系」とでも名付けられる方々の存在が全く無視されていることで、このカテゴリーの方にとっては地元系でも意識高い系でも地元土着系でも私立大学内部進学系でも彼女と楽しくやっていればリア充爆発というやつで、ここから見れば本当のリア充であろうが似非リア充であろうが同じなのではないでしょうか。

 

書いていて何を言っているかよく分からなくなってきましたが、要は、「意識高い系」は真のリア充ではない、といっても、なんだかなあ、という感想につきます。

奈良国立博物館 源信展(後期)

奈良国立博物館の「源信」展。既に終了していますが、2日に後期の展示を見てきました。

前期を見て、六道絵の凄さに圧倒されましたが、後期もこれに劣らず見応えが十分でした。

 

まずは地獄絵から。

 

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 国宝の地獄草紙です。キャラが立っていますね。

 

そして後期で一番迫力のあった地獄絵が、當麻寺奥の院の十界図屏風。

 

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とにかく、地獄図が掛け軸ではなく屏風になっており、圧倒されます。洛中洛外図っぽいところもありますが、こんな屏風を出されたら困りますね。

 

金戒光明寺の地獄極楽図。こちらは十界図ほど大きくなくコンパクトにまとまっています。

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 なにより極楽もあるし、さらに隣には阿弥陀三尊もついておられるので安心です。

 

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そして後期の目玉は、何と言ってもこの和歌山有志八幡講十八箇院の阿弥陀聖衆来迎図。

 

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回りの聖衆は全部で33体描かれていますが、この聖衆の表情が実に面白く、うっとりしたような表情の方、色っぽい方など、素敵です。

 

 これ一つ見るだけでも後期を見た甲斐がありました。