弁護士大久保康弘のブログ

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隠れ社寺探訪記(22)東福寺の塔頭 正覚庵、光明院、南明院

毎年春と秋には京都で非公開寺院の特別拝観がありますが、コロナの関係で春は中止となり、なかなか開催されませんでした。ようやくこの秋は開催されることになり、東福寺塔頭がいくつか公開されていたので行ってきました。

京阪の鳥羽街道駅で下車し、東福寺の南門を通って、

まずは正覚庵から。

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ここは歴史的に貴重な文化財があるわけではないですが、旧白洲屋敷ということで、近代の建築物としては見事なものです。格天井が美しい。庭園を散策できました。

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次は光明院に移動します。歩いてすぐです。

ここは重森三玲の手による庭園が見ものです。


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入り口で、「特別拝観ですか通常拝観ですか、と聞かれます。特別拝観は2階に上がれるとのこと。

特別拝観は1,000円で通常拝観は300円ということですがせっかくの機会ですので特別拝観にします。


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1階から見た庭園です。こは写真撮影可能。2階からの写真撮影は禁止。

しかし2階に上がっての庭の全体の眺望は素晴らしく、2階に上がるだけの価値はありました。

「拝観の手引」に2階からの眺めが載っていました。

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続いては南明院。

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ここは秀吉の妹で家康と縁組し正室となった旭姫ゆかりの寺院ということですが、小ぶりな枯山水がある程度でした。

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この日はここから伏見稲荷まで歩き、JRでJR藤森駅まで行き、藤森神社を参拝しました。

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絵馬の一つが、競馬の藤森特別のものでした。勝ち馬の名前が列記されていますが、1勝クラスの条件戦なのであまり有名な馬はいません。ただ1頭、タマモクロスを除いては。

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京都新聞杯当日、同じ距離の条件戦を京都新聞杯を上回るタイムで勝ち、その次のレースがこの藤森特別で、このレースも圧勝。飛躍のきっかけとなったレースでした。

この日はこの後、京阪墨染駅近くの中華料理店で昼食を食べて帰りました。




大津市歴史博物館 「西教寺」展

10月16日、大津市歴史博物館にて開催された「西教寺」展を見に行きました。

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10月16日、大津市歴史博物館の「西教寺」展を見に行きました。この大津市歴史博物館ですが、最近では「聖衆来迎寺と盛安寺」「義仲寺」という、滋賀県の寺宝の企画展が開催されています。滋賀県は、古くからの歴史がある社寺が多いのですが、京都のようにそれぞれの社寺で寺宝を見られる体制が整っていないため、なかなか寺宝を見る機会がありません。大津市歴史博物館は、時折、そのような社寺の寺宝を見せてくれる企画展を開催してくれるのでありがたい限りです。

西教寺は坂本の中心から少し離れた場所にあり、二度訪問したことがあります。明智光秀ゆかりの、落ち着いた佇まいの寺でした。


この博物館では、以前の企画展でも撮影可能な仏像がありましたが、今回もあったのでまずはその聖観音さまから

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今回の展示では、絵画に面白いものが何点かありました。

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この2点の阿弥陀来迎図は、緑青の色に惹かれました。図録から取ったものですが、右のものはそれなりに色が出ていますが、左のものはもっと背景に緑青の色が出ていたのに再現できておらず残念。


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これは「甘露図」というジャンルのものらしく、朝鮮で製作されたもので、国内で描かれた例はないとのこと。道理でこれまで見たことがなかったはずです。


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これは図録では小さくなりすぎて何だかよく分からないのですが、中国風俗図屏風という、中国の城壁内の都市を描いたもの。かなり大きな図でしたが、あまりに情報量が多くて目眩がしそうになりました。


さてこの日はその後、三井寺に行って、門前の「風月」で弁慶そばを食べました。きのこと鶏ささみが入ってあったまります。


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そして三井寺といえば微妙寺の十一面観世音。足が短く他人とは思えません。重文ですが、最近は宝物庫に収蔵されるようになり、もしかしたら国宝に昇格するかもと思い、その日を心待ちにしています。


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読書記録「文久元年の万馬券」

以前チェックをしていたのに、その後読むのを忘れてそのままになっていた本は多いのですが、この「文久元年の万馬券」も以前、日経の木曜夕刊で紹介されてチェックした本の一冊ですが、最近思い出すことがあり、今回読むことになりました。


今年の大河ドラマ渋沢栄一を主役にした「晴天を衝け」ですが、この「文久元年の万馬券」も同時期の話で、それだけではなく主人公がパリ万博に民部公子の随行として派遣されるシーンもあるので読むにはちょうどいいタイミングとなりました。


主人公は、三春藩の下級藩士だったところ、日米修好通商条約の批准のためアメリカに赴いた小栗忠順の従者として渡米しアラブ馬を連れ帰り、横浜にできた競馬場でレースに乗り、生麦事件に遭遇し、パリ万博に出席する民部公子に随行し、ロンシャン競馬場で騎乗し、土方歳三と遭遇し幕府軍に参加するなど、幕末期に世界を股にかけた活躍をします。小栗や土方が悲劇的な最期を遂げるのに対し、主人公は息子との再会を果たします。


このように競馬を軸にした壮大なストーリーが展開される本書ですが、大河ドラマのシーンを思い出しながら読むことができたのは今年読んだメリットでした。




青春18切符で香住まで 62歳、真夏の小冒険

毎年夏休みには、青春18切符で日帰り旅行を敢行しています。最近では、舞鶴、福井、そして昨年も仕事を兼ねて岡山県閑谷学校に行きました。


今年はどうしたものかと思ったのですが、7月になってようやく山陰本線の香住まで行くプランを思いつきました。鈍行ばかりならまあ大丈夫でしょう。ただひたすら鉄道に乗るだけならもう少し先まで行けるでしょうが、行った先で観光らしきものをするとなると、山陰方面ではこの香住あたりが限界になるでしょう。

8月11日に行くことにしましたが、翌日からはずっと雨だったのでこれが正解でした。

まずは大阪駅から丹波路快速に乗ります。篠山口で福知山行きに乗り換え。せっかく寝てたのに起きなければならないのが辛い。

福知山で山陰本線城崎温泉行きに乗り換え。

城崎温泉で駅の待合室に行ってみると駅弁が売っていましたが、ハタハタ寿司が魅力的でしたが帰りに買おうと思いその時点では買いませんでした。

城崎温泉からディーゼル車に乗り換え。赤い国鉄型車両で一気にローカル色が濃くなります。トンネルを抜けて次の竹野から日本海に出ます。

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香住には12時30分着。観光案内所でレンタサイクルを借りますが遠方から来た人には無料。これはありがたい。天気は曇りでそれほど暑くはありません。

駅前の店で海鮮丼を食べようと考えていましたがすでにランチ終了で閉まっていました。漁港の方に行きますがどこも12時には閉まるようで、なかなか開いている店が見つからず苦労しました。しかしようやく14時までの店を見つけてほっと一安心。

今が旬の白イカ丼とのどぐろ炙りを食べました。

味噌汁は蟹汁です。大満足でしたが2300円くらい。

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さて何とか昼食を終えて本日の目的地である大乗寺を目指します。坂もない平坦な道で10分もかからずに着きました。

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大乗寺といえば円山応挙の襖絵です。丁寧に案内していただきました。

さて昼飯を食べるのに時間がかかりましたが何とか予定していた14時の列車で城崎温泉に戻ります。


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幸い、少し時間があったので御所湯まで行きました。

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ここは露天風呂で岩から水が流れるのを見ながら入浴できるので気持ちよく、満足できました。

さて城崎温泉駅で駅弁を買おうと思ったら売り切れ。まあ昼にいっぱい食べたのであまりお腹も空いていないので何とかなります。

帰りは豊岡で一度乗り換えなのが面倒で、和田山で再度乗り換えなので、眠ろうにも眠れないのが残念でした。

和田山からは超久しぶり(40年以上)の播但線。これも途中の寺前で乗り換え。

姫路に着いたのが20時を過ぎており、残念ながら駅そばを食べることはできませんでした(普段はかなり遅くまで営業しているようです)。

帰りに駅弁を食べられなかった点以外は満足の行く旅になりました。来年は串本の無量寺に行こうかな。


奈良国立博物館「奈良博三昧」

7月は前半雨、後半は猛暑で、なかなか出かけることができなかったのですが、4連休のうちの7月24日、春日大社国宝殿の「絵解き!春日美術」奈良国立博物館の奈良博三昧を見てきました。

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まずは春日大社の駐車場に車を止めて国宝殿へ。は絵巻物が中心の展示でしたが国宝の古神宝類もありました。


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奈良博三昧は、写真撮影が可能だったので、何枚か撮影した写真を挙げておきます。


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これは牛皮華鬘。国宝です。


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十一面観世音像。これも国宝です。

隣のなら仏像館は仏像の展示なので、このような仏画が見られるのはありがたいですね。


こんな写真も撮れました。

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前期は8月15日まで。後期は8月17日から9月12日までです。


9月12日まで。

隠れ社寺探訪記(21)聖衆来迎寺、盛安寺

6月12日、先日の比叡山に続いて、再度滋賀県を訪問しました。同じく湖西線比叡山坂本で下車しましたが、今回は琵琶湖側に降ります。京都からの列車は昔懐かしい113系でした。


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まずは聖衆来迎寺に向かいます。

坂本駅から1キロなのでそれほど遠くありません。住宅街の中の平坦な道を歩きます。

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ここは、少し前までは正確な場所も知らない状態でしたが、昨年、大津市歴史博物館で開催された「聖衆来迎寺と盛安寺」展を観に行き、その寺宝の質と量に圧倒されたため、一度訪れたいと思っていました。


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この門は、明智光秀坂本城の門を移築したものだということです。

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本堂。

境内には織田家の武将、森可成墓所があります。

信長の部下であるこの森可成を手厚く葬ったことで、焼き討ちを免れ、寺宝が今に伝わったということでしょう。

寺宝は昨年の展覧会で存分に見ました。今日はその図録を持参して眺めていました。


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次に坂本城跡に向かいます。

1.9キロで、平坦な道ですが、結構遠い。

城址公園は整備されていますが、実際の坂本城はここより少し北にあったようです。

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下は、日吉大社の七本柳鳥居。祭りの船渡御が到着する桟橋です。

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次に、盛安寺に向かいます。ここから1.1キロ。

Google mapsでは「盛安寺」という名前では出てきませんが寺の境内が緑色になっているので分かります。また、道を挟んで向かいに、「観世音菩薩」という表示が出てきますが(下の写真)ここが盛安寺の十一面観世音がもとおられた場所と思われます。現在は宝物庫におられます。

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下の写真は大津市歴史博物館の展覧会にて撮影したものですが、今回は宝物庫の窓から覗く格好で拝観できます。5、6月の土曜日には窓が開けられています。


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ここから高穴穂神社を経由して石山坂本線穴太駅へ。


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穴太駅からは京阪石山坂本線に乗車し京津線大谷駅にまで行きます。


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蝉丸神社に参拝して、「かねよ本店」に行き「きんし丼」を食べました。たまごは錦糸ではなくだし巻きですが。

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お腹が膨れたところで、京津線で一駅、上栄町に戻って、関寺小町の関寺の跡にある長安寺に行きます。

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牛塔と言われる大きな石塔があります。

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この長安寺の境内には小さな弥勒菩薩像などがあり、なかなか不可思議な感じでした。

これで今回の隠れ社寺探訪は終わりで、この日は三ノ宮に向かう予定があったので14時過ぎに大津駅からJRに乗りました。短時間でしたが充実した一日でした。


読書記録 「サガレン」梯久美子

最近読んだ本の中から梯久美子「サガレン」を紹介します。


この本の著書である梯久美子さんの本は、「散るぞ悲しき」「狂うひと」など何冊か読んでいますがいずれも読み応えがありました。

今回のこの「サガレン」はサハリン紀行。著者は女性には珍しい鉄道ファンとのことで、この本にも宮脇俊三氏や徳田耕一氏の名前が出てきます。

サハリンへの旅は前半と後半に分かれていますが、前半は鉄道、後半は宮沢賢治の旅の跡を追う内容になっています。


この本を読んで一番驚いたのが、宮沢賢治の旅を追う第二部の「青森挽歌の謎」という章です。


宮沢賢治は、花巻から樺太に行く際、最初に東北本線で青森まで行き、その時に書かれたのがこの「青森挽歌」なのですが、その中に、「わたくしの汽車は北へ走つてゐるはずなのに ここではみなみにかけてゐる」という部分があり、その部分の解釈が問題となっています(165頁)。


そこではこれまでの先行研究が引用されていますが、それらは、

「列車の軌道上、花巻から青森までの北帰行に、南へ走ることはまず有り得ない」として、方角が意味を喪失するとしたり、

疲労して意識が朦朧としている時の方向感覚」

としたりしたもので、花巻から青森までの間に南に向かうことはあり得ないことを前提としています。

しかし、話はもっと単純で

花巻から東北本線で青森へ向かう際、南下する区間がある、というだけのことだと著者は書いています。

その区間の地図を貼っておきます。



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ちょっと薄いですが、青森から野内、浅虫を経由する青い線が旧東北本線(現青い森鉄道)で、浅虫から青森まで向かう場合、南に向かって走ることが分かると思います。

もちろん地図は昔からあったわけで、ちょっと地図を見さえすれば東北本線で青森に向かう際に南に向かう区間があることが分かります。

以前の研究者は地図を開いて見ることもしなかったのか、と鉄道ファンの端くれとして残念に思いました。


この箇所を読んで連想したのが、東海道新幹線で東京から大阪に向かう際、富士山が見えるのは進行方向右手の車窓ですが、左手の車窓から見えることが「有り得ない」かというと、そんなことはなく、ほんの短時間ですが見えるのです。このことも連想してしまいました。